■伝統と継承と
私達の周りにあふれる日用品。それらの多くは、誰が作ったものかは、分からない。
だけれども、時として、名のある作り手が作った物以上に、人々を惹きつけてやまないものがある。
かつて、そんな日常の雑器に「美」を見出した人々がいた。
バーナード・リーチや柳宗悦、河井寛次郎、濱田庄司らだ。
彼らが新たに提唱したこの考え方は、「民芸」と名付けられ、またたく間に日本各地に広がりをみせた。
今回、油亀で個展を開催する井上尚之。
彼は「民芸」の代名詞ともういうべき「スリップウェア」という伝統技法の継承者。
そのうつわを一言で言えば、「温故知新」。
伝統を受け継ぎ、彼はそこから、自分自身の「スリップウェア」を生み出した。
描き出すその模様。
奇をてらったものはない。
単純だ。
誰にでも書けそうだ。
そう思う人がいるだろう。
けれども、すぐに気がつくはずだ。
いたってシンプルなその線の動き。
そこには、誰にも真似できない。
唯一無二の線がある。
自由闊達。
豪放磊落。
一人の人間が生み出す、線の力に、多くの人が魅了されるだろう。
伝統技法「スリップウェア」を使いこなせる井上だからこそ、その線は生まれるのだ。
この冬。
井上尚之のこれまでの作陶人生の節目となる、渾身の展覧会が、岡山・油亀で開幕いたします。
民芸ファンやうつわのコレクターだけの展覧会でなく、幅広い層の方々にこの展覧会をご覧いただきたいと考えております。
アートスペース油亀
代表 柏戸喜貴
うつわの元になる材料は、大地が長い年月をかけて熟成させてきたものだ。
陶芸家はその恩恵のもとに、様々なうつわを作っている。お皿やマグカップ、ピッチャー、湯のみ、そばちょこetc。
熊本県の小代焼、ふもと窯の若き担い手。
井上尚之も、自然の恵みのもとに、うつわ作りの日々を送っている。
彼が使っているのは、小岱山の麓で採れる良質の粘土、阿蘇山の黄土、天草の石。
それらからうつわの形を作りあげた後、今ではすっかり井上尚之の代名詞ともなった、ある仕上げをする。
「スリップウェア」だ。
「スリップ」とは化粧土のこと。
人間がお化粧をするために、化粧道具を持つように。うつわにも、お化粧用の土があるのだ。
化粧土で、うつわの表面をメイクアップ。様々な模様で、装飾開始。
そうして生まれたスリップウェアのうつわたちは、どこか懐かしい、ノスタルジックな風合いを漂わせている。
「スリップウェア」の歴史を紐解けば、はるか昔、古代ローマや古代ギリシャ以前にまでさかのぼる。
長い年月をかけて連綿と受け継がれてきたこの技法。特に17世紀のイギリスにおいて盛んに使われ、様々なうつわたちが残されている。
そして、時は大正時代。このスリップウェアは、海を越えた島国、日本で「発見」されることになる。
「スリップウェア」の衒いのない実用美が、民芸運動の先駆者たちの目に止まったのだ。
以後「スリップウェア」は日本に息づき、多様な作品が生み出されることになった。
さあ、井上尚之が生み出す「スリップウェア」を見てほしい。
その模様のおおらかさに、目を瞠るだろう。
うつわの表面に模様を描いているだけ。
だけれども、その線の伸び、動きは、明らかに、このうつわが井上尚之のものだと指し示しているのだ。
伝統とは、受け継ぐ誰かがいなければ、永らえることはできないもの。
「スリップウェア」が21世紀の食卓を彩ることができるのも、唯一無二の模様を描く井上尚之のうつわがあるのも、
名も知れぬ無名の陶工たちが、この技法を伝えてきたから。
そして、これから先の遠い遠い未来において、「スリップウェア」が存在するかは、今この時次第。
伝統を受け継ぎ、伝統を未来に伝える男、井上尚之のうつわ展「トラディショナル」。
伝統的な技法が生み出す、古いからこそ新しい世界をご覧あれ。
「熊本県の陶芸家、井上尚之のうつわ展。BRUTUSで特集記事が組まれるなど、今、最も熱い陶芸家。
彼の個性がそのまま表現されたかのような、おおらかで大胆、かつ包容力のあるうつわ、約500点が勢ぞろいいたします。
丸のカタチに長方形、オーバル、いろいろなカタチが楽しいお皿は、井上尚之の真骨頂!
表面に描かれた「スリップウェア」の模様の美しさが、目を惹きます。
特に人気なのは、オーブンでも使えるオーバル皿。見ているだけでグラタンが食べたくなる、極上のグラタン皿です。
さらに!コーヒーにぴったりのカップ&ソーサーや、マグカップ、ミルクピッチャーを始め、
そばちょこや、鉢類、片口、すり鉢などの、日用食器、花器etc. 陶芸家 井上尚之の集大成ともいうべき展覧会です。
※出品作品はすべて展示販売いたします。
なお、油亀限定の特別グッズとして、井上尚之の「スリップウェア」の模様をモチーフにした限定グッズ「スリップウェア手ぬぐい」が登場いたします。
■News
12月21日号の読売新聞社さんで、井上尚之のうつわ展「トラディショナル」をご紹介いただきます。
12月14日9:25からのRNC西日本放送さん「シアワセ気分!」で、井上尚之のうつわ展「トラディショナル」をご紹介いただきました。
12月14日号のリビングおかやまさんで、井上尚之のうつわ展「トラディショナル」をご紹介いただきました。
12月11日号の山陽新聞さんで、井上尚之のうつわ展「トラディショナル」をご紹介いただきました。
12月6日号の朝日新聞さんで、井上尚之のうつわ展「トラディショナル」をご紹介いただきました。
12月号のタウン情報おかやまさんで、井上尚之のうつわ展「トラディショナル」をご紹介いただきました。
■News