<はじめに>
日本家屋と聞いて、思い浮かべる名著がある。谷崎潤一郎の「陰翳礼讃(いんえいらいさん)」だ。
日本家屋がもつ「かげ」を称えたこの本を読むたびに、
我々は「かげ」の美しさに気がつかず、自ら放棄しているように思えてならない。
光がたえない室内。煌々と照らされた食卓。きらびやかな器に照明があたる。
電灯が生み出した人工的な「かげ」の世界。谷崎が称えた「かげ」とは真逆のものだ。
朝、昼、夕暮から、宵闇へ。太陽が移りゆくと同時に、
新たな「かげ」が生まれ消えていく様を目にすることは、もはや不可能なのか。
そんな一抹の不安を抱いていた頃、私はある皿と出会った。
陽の光にあたり、くるくると表情を変える。
つまるところ、それは「かげ」を纏っていたのだ。
皿の作り手は寺村光輔。栃木県益子の陶芸家だ。
彼は谷崎が称えた失われた「かげ」を超え、新たな「陰翳」の世界を我々に見せてくれるだろう。
■概要
展覧会名:アートスペース油亀企画展 寺村光輔のうつわ展「陰翳礼讃」
2017年12月16日(土)→24日(日)open11:00 close19:00 入場無料、会期中無休
会場:アートスペース油亀
住所:〒700-0812 岡山市北区出石町2-3-1
お問い合わせ:086-201-8884
作家在廊日:2017年12月23日(土)



■展覧会Webサイト
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■作品点数と内容
新作の角皿をはじめ、
益子の土から生まれた、日常使いのマグカップや
そば猪口、丼、片口、飯碗、八角皿、浅鉢、深鉢、
深小鉢、大鉢、四方鉢、中鉢、麺鉢、小皿、中皿、
大皿、角皿、オクトゴナル、オーバルプレート、
ピッチャー、花器など。
本展では寺村光輔が生みだした
1000点を超える渾身作を一堂に展覧いたします。
※展示作品はすべて販売いたします。




栃木県益子の土。植物の灰。自然の恵みをその手にして、寺村光輔が生みだしたうつわたち。
豆皿ひとつをとっても、綺羅星のごとく光る世界。
さらには、これから寺村光輔が生み出す新しい「伝統」の片鱗をうかがい知ることができる展覧会です。

透き通るように美しい海の下には、夜空のように輝く瑠璃色の世界が浮かびあがる。
栃木県益子の土。植物の灰。自然の恵みから唯一無二のうつわを生みだす。



■作品の特徴
作品の特徴は、その雑味にあります。
益子の土、それもあえて加工されていない原土に近いものを使うのが、寺村光輔のうつわの特徴です。
そのため、益子の土の個性がそのままうつわに現れる。うつわの表面に出る黒い点などは、その一つです。
また、今となっては入手不可能といわれる幻の土、寺山白土を作品に使用してます。
そして、自然の恵みから生まれる灰釉(はいゆう)も、寺村光輔作品の特徴の一つです。
特に、林檎の樹の枝を燃やしてつくる林檎灰釉(りんごはいゆう)を使用した作品は、独特の温かみを感じさせる、寺村光輔の大人気シリーズです。
手間のかかる工程を丁寧にやりとげていくことで、うつわを使う人の気持ちに寄り添った作品を生み出しているのです。
そのため、使い勝手は抜群。
日々のくらしの中で気持ちよく使い続けることができるのです。
※展示作品はすべて販売いたします。

<写真左>寺村光輔「林檎灰釉七寸深皿」
近隣のりんご農家さんから、りんごの枝をわけてもらって、釉薬を作りました。しっとり柔らかな、黄色の艶が秋の香りを届けます。
<写真中>寺村光輔「泥並釉 オクトゴナル(大) 」
「オクトゴナル」はフランス語で八角形を意味する伝統的なカタチ。その伝統に、寺村光輔が新たな息吹を吹き込みました。料理が映えるお皿です。
<写真右>寺村光輔「黒釉 鎬マグカップ」
懐古的な雰囲気を漂わせる、コーヒーカップ。黒釉の妙と煌きが冴えわたります。ブラック派にもミルク派にも、おすすめ。最高のひと品です。
<写真左>寺村光輔「長石釉八角皿」
梨の枝から生まれた釉薬を使った八角皿です。絶妙なサイズが、手に馴染む。取り皿やお菓子皿としても使いまわせる。ものすごく重宝します。
<写真中>寺村光輔「うのふ釉 6.5寸浅鉢(鎬) 」
使いやすさは、一級品。カレーにサラダにパスタ。麺にも丼にもぴったり。油亀のまかない食では、スタッフがこぞって取りあいます。6.5寸浅鉢。
<写真右>寺村光輔「糠青磁釉ピッチャー」
ほれぼれとする色合いに、思わずため息がこぼれてしまいます。碧の輝きは、光でその景色を変えていく。これこそ寺村光輔の釉薬、真骨頂。
■寺村光輔 プロフィール
寺村光輔 / Kousuke Teramura
栃木県芳賀郡益子町在住。
1981年東京都生まれ。2004年法政大学経済学部卒業。
益子にて、若林健吾氏に作陶を学ぶ。
2008年、益子町大郷戸に築窯 独立。
2015年 アートスペース油亀企画展 寺村光輔のうつわ展「温故知新」
2017年 アートスペース油亀企画展 寺村光輔のうつわ展「陰翳礼讃」
2019年 アートスペース油亀企画展 寺村光輔のうつわ展「余白」
益子の土を使い、近隣で手に入る木の灰を使って釉薬を作る。
あたたかみのある色合いが大人気の林檎灰釉は、近所のりんごの枝から生まれている。
伝統をふまえながら、「今」の暮らしに必要なうつわを提案。
そのうつわに料理を盛りつけたときの美しさは、食べることの楽しみを教えてくれる。